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2011年2月 5日 (土)

Milton Babbittの死:ある時代の終わり

1750年、ヨハン セバスティアン バッハの死をもってバロック期は終焉を迎えた、、、、

わけが無い。

バッハの死よりも前から、バロックスタイルの作曲法は衰退を見せていた。

バッハが死んだとき、すでに古典派は始まっていたのである。

もとより、ピンポイントでいつ、何々が終わったなどといるものではない。

しかし、「バッハの死」はバロック期という時代の終焉とするだけの意味を持っている。

アメリカの作曲家ミルトン・バビット(Milton Babbitt)が亡くなった。

彼の死は、ある時代の終焉を私に感じさせた。

NYTimesにバビットの記事がある。

それを適当にまぜながら話を進めよう。

バビットはアメリカ作曲界の巨人であり、エリオット・カーターを並ぶ大御所であった。
そして多大な影響を与えたのでした。

NYTimes:
Mr. Babbitt was the first to use this serial ordering not only with pitches but also with dynamics, timbre, duration, registration and other elements. His methods became the basis of the “total serialism” championed in the 1950s by Pierre Boulez, Luigi Nono and other European composers.

バビット氏は(シェーンベルクの行ったような)順番付け(serial ordering)をダイナミクス、音色、音価、音の高低やその他の要素に使用した最初の作曲家であり、このような方法は1950年代にピエール・ブーレーズやルイジ・ノーノ等ヨーロッパの作曲家達のトータル・セリーの基礎となりました。

バビットはこの方向への研究を進め、最終的にはAll Partitionというところまでいきました。
これが何かは説明不能です。彼は教師として、彼の曲の作曲理論をいたるところに書きましたが、
難しすぎて理解するのに時間がかかります。

こう書くと、彼の音楽は難解な現代音楽であり、

所謂アカデミズムの権化ではないかと思われるかもしれませんが、実はそのとおりです。


彼は1オクターブ12音を如何に配列するか、その結果何が得られるかを追求しました。

究極的には常にAggregateがある状態を保つことというのが彼の作曲の根本にあったように思われます。

彼の作曲理論は後続の作曲家たちに影響を与えました。

英語でSerial Musicと呼ばれますが、特に音楽理論の専門家達からの賞賛は比類がありません。

従って、大学教授達はこぞってSerial Musicを、Babbittの音楽を授業で教えます。

アメリカの現代音楽を考えるときにMilton Babbittの名は避けて通れません。

「アカデミズム」という言葉はわりと否定的に響きます。

しかし、バビットは途中でひよる事もなく、折れることもなく、浮気することもなく、ただひたすらに

Serial Musicを追求し、深化したのでした。

研究し尽くすという態度。

私は美しいと思います。

そうして出来た曲の中に私はBeautyを見つけます。

それは心地よい音ではありません。

美しい旋律もありません。

いわんや鼻歌できるものすら存在しません。


しかし、それでもBabbittの曲は"Beautiful"だと思います。

さてBabbittという人はどんな人だったのでしょうか。


He often said in interviews that every note in a contemporary composition should be so thoroughly justified that the alteration of a tone color or a dynamic would ruin the work’s structure. And although colleagues who worked in atonal music objected when their music was described as cerebral or academic, Mr. Babbitt embraced both terms and came to be regarded as the standard-bearer of the ultrarational extreme in American composition.
    
彼はインタビューにおいて「現代曲の全ての音は完全に説明されるべきであり、それ故に、音色の変更や強弱の変更は曲の構造を台無しするのです」。通常アカデミックとか脳みそ用(cerebral)とか言われれば否定するものですが、彼はそのような言われ方も暖かく受け入れ、アメリカ作曲界の超究極的論理派の旗手と考えられるようになります。


“Why refuse to recognize the possibility that contemporary music has reached a stage long since attained by other forms of activity?” Mr. Babbitt wrote. “The time has passed when the normally well-educated man without special preparation could understand the most advanced work in, for example, mathematics, philosophy and physics. Advanced music, to the extent that it reflects the knowledge and originality of the informed composer, scarcely can be expected to appear more intelligible than these arts and sciences to the person whose musical education usually has been even less extensive than his background in other fields.”

「なぜ現代音楽到達した領域を認めることを拒否するのでしょうか?この領域は他の分野ですでに認められているというのに。かつて、数学や、哲学、物理などは特別な準備をしなくても普通に教育された人なら、理解する事ができたのに。しかし、訓練された作曲家のオリジナリティーや知識を持った曲が音楽教育をちゃんと受けていない人(物理とかと同じレベルで教育されていない)には理解されることはない。

白衣を着てフラスコを振りながら作曲するような頑固で変人?でしたでしょうか。
プライベートではとてもユーモラスの人だったと聞いています。


しゃべるしゃべるしゃべる。。。。恐ろしく論理的ですが。。。。

プリンストン大学で教え、アメリカでは勿論演奏されています。

指揮者ではジェームズ・レヴァインが新曲をComissionしたりしています。

しかし

Mr. Babbitt’s orchestral music is so exceedingly complex that both the New York Philharmonic, in 1969, and the Philadelphia Orchestra, in 1989, postponed premieres when the available rehearsal time proved insufficient.

バビット氏の管弦楽曲はあまりに複雑で、NYフィル(1969)とフィラデルフィア響(1989)はリハーサルの時間が不十分であったため、初演を延期する事になった。

というのように困難・難解でもあります。


しかし、バビットはもういません。

いや、実際のところ、厳格なSerial Musicなど今時誰が書くというのでしょうか。

スタイル的には時代遅れと言って良いでしょう。

今や、作曲家達はありとあらゆる技法を用い、自らの感性を信じ、個性的な曲を書いています。

現代音楽がプロオケのプログラムにのる事は日常茶飯事になりました。

一部のコアなファンだけではなく、人気作曲家も出てきました。

そういった意味ではアメリカン・アカデミズムは終焉を迎えていました。

「バビットの死」は「バッハの死」と同じように、

アメリカン・アカデミズムの終焉とするだけの意味があります。

バッハの音楽が決して「死」を迎えることがないように、

バビットも音楽も決して「死」を迎えることはないでしょう。

Milton, thank you for your all the effort for contemporary music and wonderful compositions.

We will miss you.

LOVE

Daijiro Ukon


傑作:A Solo Requiem


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コメント

初めて聞きましたが(知らない間に、NHK現代の音楽で聴いていたかもしれないですが)
すごく好きです。
どういう方を哀惜していたのかやっとわかりました。

シンバルさん、

有り難うございます。
今猛烈感動しています。

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